思い出を食べて生きていく

まだ私が20歳そこそこだったころ、年上の新婚女性に「結婚生活いかがですか?」とたずねたら返ったきた言葉が表題のとおり。「これからは思い出を食べて生きていくわ」と。

その女性は性に奔放な人だったので「もう男性と気ままに遊べないわ」という意味なのだろうと当時の私は解釈した。貘が夢を食べる生き物だという話があるけど、思い出を食べて生きていくのが人間なのだろうか、などと思いながら。

あるとき占いの話になった。こういう話題は女性同士だと特に盛り上がる。我々の運勢を調べたら、同じ星回りであることが発覚した。えっ!私は性に奔放な女性なのか?半分ショックを受けつつも、それ以外の部分の共通点がいくつかあったので納得した。

実際に私が結婚するまでにはそこからかなりの年月がかかった。どちらかというと奔放ではなかったと思うが、それなりに様々な経験をし今に至る。結婚してからはバタバタと家事・育児に追われる日々。

穏やかに暮らしながらも時折過去に触れることがある。交際していた相手に限らず、仲間や自分ひとりで行った場所や店に家族で行くこともある。その瞬間、あの頃の自分に少しだけ輝きをもらっている気がする。辛い思い出もあるけど、自分が一生懸命に生きていたから今があると判る。これが私にとっての「思い出を食べる」かもしれない。主食ではなく軽食、飴みたいな味わい。ちょっとしたエネルギーチャージ。

そして今の私もいつか思い出になる日が来る。今日この日の悲しみや苦しみも、未来の私の栄養分となりますように。