プロのステージでみつけたもの

自由に動き回っていた独身時代の夜。地元で活動するミュージシャンと付き合っていた友人が、歓楽街の小さなライブカフェに誘ってくれた。どうやらプロの前座で地元バンドが演奏、というよくある流れのようだ。お互い集客のためにメリットがあるものね。友人は彼のカッコいい演奏姿を堪能するために、私は音楽と酒場の雰囲気を楽しむためにドアを開けた。

10にも満たないテーブル席、ドリンクのカウンター、そしてステージ。観客は知った顔が数名。この地元バンドを見るのは何度目かだけど、音源で聴くよりも生で聴くほうが胸にくる。それはこのバンドに限らず言えることだろうけど、特にそう感じられた。なによりも、友人のおかげでステージ真正面であったから余計に。

地元バンドの演奏が滞りなく終わり、いよいよプロの演奏が始まる。現れたのは谷口崇さんと田辺マモルさんだった。彼らは二人でツアーを行っていたのだ。1曲目は"こっちの"ドリフターズの『GO GO WEST』。のんびりゆっくり気ままな旅、二人のイメージをそのままに表した曲だ。

そんなちょっとしたおちゃらけで場を和ませたあと、ソロは谷口さん・田辺さんの順に。良い意味で肩の力が抜けたステージ。でも歌や演奏は確実にプロであるから、どうしても前座との違いを感じてしまう。特に田辺さんには参った。どうしてあんなにふざけているのに心を揺り動かす一撃を食らわせてくるのか。

悲しい夜は 思い出して欲しい かつて君に夢中になった男がいることを 

(『プレイボーイのうた』より)

ライブが終わるといつもちょっとした語らいをして何となく帰るけれど、この日は田辺さんのCDを買って帰った。田辺さんから直接購入し握手していただく。CDは"お手製"であった(契約的には大丈夫なのだろうか?当時フリーでいらっしゃったのかもしれないけれど)。友人は携帯にサインをしてもらっていたほど。「なんだよ、みんな田辺さん好きなのかよ」って友人の彼氏はボヤいていたけれど、それにも納得しているような顔だった。きっとみんな、音楽が好きなんだな。

ライブに行くと、みんな田辺さんのことが好きになると思う。グニャグニャしてみっともなくて情けない、けれど日々のいろんなきらめきを拾い集めている。公園の砂場で見つけたガラスのかけらのような。


田辺マモル プレイボーイのうた