文化的生活の記録

「旅文学」の小さな本を作り始めました。

『For Sentimental Reasons』

先日少し触れた、Linda Ronstadtのことについて書いておきたい。

私がLindaを知ったのは中学一年の春だった。私が『When You Wish Upon a Star(星に願いを)』のオルゴールを持っているのを見かけた叔母が「その歌が入ってるCDがあるよ」と貸してくれたアルバムが『For Sentimental Reasons』だった。

それまで私はクラシックのCDばかり聴く小学生時代を送った。ヒットソングは友達が歌っているものしか知らなかったしあまり興味がなかった。自分が音楽を習っていないという引け目もあった。さらに、悲しいことに私は小学校の担任にいじめられていた時期があり、その担任に「あなたはリズム感がない」と指摘されていたため、音楽には近づかないようにしていたのだ。それでもクラシックのCDだけ聴いていたのは、親が取引先からクラシックのコンピレーションアルバムを貰い、それを譲り受けたためである。

『For Sentimental Reasons』はLindaがジャズのスタンダードを歌った三部作のなかのひとつだ。音楽に疎い中学生がいきなりジャズ、というのは普通ではないだろう。しかしLindaの優しく可愛らしい、ときに強い歌声の素晴らしさは中学生でも充分理解できた。そしてスタンダードナンバーであるからこそ楽曲は間違いないものばかり。すぐにカセットテープを買いに走りダビングさせてもらった。

どの曲も魅力的であるため「この一曲」というのを挙げづらい。だが、アルバム最後を飾る『Round Midnight』は特に私の心をえぐった。この暗さが私にはちょうど良かった。この頃、車のCMでこの曲が流れていたのもあり印象に残っている。ネット検索したが、どのメーカーのどんな車だったか、誰が歌っていたかは判らない。ただ、声は限りなくLindaに似た女性だった。

月日は流れ、大人になってからはついにCDを手に入れた(さようならカセットテープ…)。するめのように何度も聴いた。さらには自分の結婚式でも使用した。これはさすがに『Round Midnight』は使用しなかったが、『Straghten Up and Fly right』のような明るい曲調のものをピックアップした(『Straghten Up and Fly right』で結婚式、というのも、大人のふざけた感じ・陽気な感じがしていいのではないかと思ったのだ…)。子どもを寝かしつけるときに歌うこともある。

そういうわけで、Lindaはいつも身近にいる。時代の変化と共にCDからiTunesiPhoneにデータを移しながらも、ずっと側に。

For Sentimental Reasons

For Sentimental Reasons