花を買う

年に数回、花を買いにいくことがある。母の日のように買う花が決まっている場合は予算やだいたいのイメージを言えばいいのだが、「二〜三本の花をお持ちください」という本数指定の場合が難しい。会合に持ち寄る花なのだが、三本でできるだけ華やかさを出しつつ、しかしあまり高級な花を持っていくと周囲との差ができてしまうので、ほどほどな程度の花にしなければならない。

今年もそのシーズンがやってきた。まず買う店から吟味しなくてはいけない。スーパーの生花コーナーもあれば高級花屋もある。今年は間をとって大型ショッピングセンターに入っている花屋にした。花の鮮度の都合から、子どもの帰宅した時間帯に連れ立って出かける。

花屋にはよくミニブーケという三百〜五百円程度のものがあるのだが、今回は除外だ。背が低すぎるのと、若干鮮度が落ちるためである。そのうちに子どもが珍しい花に吸い寄せられていく。あれは芍薬というのだよ。立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、というぐらいなのでボリュームも美しさも桁違いである。しかしこれは大きすぎる。人間の女性で言ったら確実に女優レベル。もっと「クラスで一番かわいくて、芸能オーディションを受けたんだけど二次選考で残念ながら落選。その後、地元役場の観光課につとめ消防署員と結婚し三児の母となる。小学校で息子はいつも『おまえのかーさん美人だよな』と言われ悪い気はしない」というランクの花が良い。

そのうちに子どもはかすみ草に目をやった。普段のかすみ草は白いが、染料を吸わせているのか数色のカラフルなかすみ草となっていた。「これいいね」と意見が一致し、水色をセレクトした。しかしメインとなる大きな花がほしいところ。クラスで一番かわいくて(略)。そこからはプロの出番である。お店のお姉さんに声をかけると、おすすめされたのはガーベラだった。ガーベラは価格もそこまで高くないし、これもまた様々な色が揃っている。ミニガーベラではなく少し大きい、単に一色というよりはどことなくグラデーションのかかった、落ち着いた薄いピンクのガーベラを二本選んだ。水色のかすみ草との相性も良く、ほどほどに華やかだ。

こうやって花を買いにいくようになって数年(といっても数回だ)、今回ようやく花屋で自然に買い物ができるようになったな、と思えた。最初は花の種類や、シチュエーションにあった花の選び方もわからない。お店の人に聞けばいいけれど、花屋での「欲しいものを伝える話術」というものがあると思うのだ。自分の頭の中にあるイメージと、実際の花でできることが一致しなければならない。今も花の種類はほとんどわからないが、イメージを伝える話術は身についた気がする。

家に花のある生活というのも美しいものなんだろうな、と想像する。一輪挿しから始めてみましょう、などとよく見聞きする。一輪だけ買うというのもなかなか勇気がいるが、「これぞ」という花を選ぶのも楽しいものかもしれない。会合とかプレゼントとかそういう目的ではなく、そのときの気持ちで選ぶ自宅の花。珈琲や器、本のように、そういうものが日々のちょっとした安らぎになるのだろう。まずは生ける場所を作るところから、なのだけど…。