子どもと美術館へ

先日、学校の午前中授業日に子どもと街へでかけた。最近美術館に行っていないよね、という話になったからである。夫も含めて家族で美術館に行くこともあったのだが、休日に出かけることになるため人が多く疲れるばかり。「行きたいなら平日に行っておいで」と言われ、以後それを忠実に守っている。

美術館はひとりでゆっくり見る方が気楽だ。しかし子どもと見ると時折発見がある。子どもが意外なものに食いついていたり、ハッとするような感想を漏らすことがある。それを含めての鑑賞なのだ。今回は私にはあまり興味のない特別展だったが、子どもが「これがいい」と譲らなかった。こういうときは子どもの意見に乗ってみるのも楽しむコツだ。

この美術館には何度も訪れている。その度に庭が美しいなあと展示を見る前から立ち止まってしまうのだが、この日もそうだった。植物にうるさい我が子は庭の木々を確認する。緑にうかぶ手足を見て、伸びたなあと思う。ときどき訪れる場所だからこそ定点観測的にわかることがある。

やっと特別展へ向かう。子どもにヒソヒソと解説を入れながら進む。絵の「リアルさ」に子どもは圧倒されたようだ。作者の素描が書かれたノートの裏側までもしゃがみこんで見ようとしていた。ONE PENNY NOTEと書いてある。「ペニーって何」「お金の単位だよ」と話す。偉大な作家もこんな普通のノートに書くところから始まったのか。何年も前のボロボロになったノート。はるか昔の世界を生きた人の作品が、それを生み出した日常が、いま私たちの街にやってきている。「ホッチキスが錆びてるね」と子どもはつぶやいた。

70パーセント程見ると子どもは疲れてしまったようだ。途中からは早足で進む。トイレ休憩を入れたり、ベンチに座る。そのベンチに置かれた図録で、早足で通り過ぎた部分を振り返ってみる。その先のグッズ売り場では迷わず図録を買うことにした。それと絵葉書。美術館に行ったときは必ず自宅用に一枚、子どもの祖母たち宛に手紙を書く用に二枚、合計三枚の絵葉書を買うようにしている。そのセレクトもまた、愉快な時間なのだった。

美術館から帰宅すると、ちょうど学校から帰る位の時間になった。何が楽しかった?と聞く前に、子どもは図録を開き素描を真似て絵を描き始めた。私はもうひとつの特別展を味わうことになった。夜に仕事を終え帰宅した夫も、その作品たちをうっとり眺める。美術館だけで終わらない楽しみがそこにはあった。