文化的生活の記録

「旅文学」の小さな本を作り始めました。

分娩室のBGM

出産前、産院の母親学級で分娩室を見学しているとき「ここでは好きなCDをかけたり、DVDを見ることもできます」と助産師さんに言われ母親たちはどよめいた。近頃の産院は何かとサービスが多いと聞いているがここまでとは。続けて「(連れてきた)上のお子さんにトーマスやアンパンマンのDVDを見せる人が多いです」と説明がありDVDに関しては納得したが、出産時に曲をかけるというのは何とも奇妙だ。もともと初産の私には出産自体が未知の世界だというのに。あれか、エンヤとか流して「私とベビたんの共同作業です!」とか言うのだろうか。

「自分が死んだら葬式ではこの曲をかけてほしい」だの「無人島に持っていくならこのアルバム」だのよく語り合うものだが、出産に関してはノーマークであった。手術の際「患者さんにリラックスしてもらうために好きなCDを持ってきてもらう」という話を聞いたことがあるが、それに近いものだろうか。

結局私はCDを持ち込むことなく出産に挑んだ。陣痛促進剤を打つことになったので「普通より陣痛は痛いですよ」と言われる。いや、私普通の痛みの度合い知りませんから。そしてもう既に相当痛いはずなんだけど、さらにそれを上回る痛みが来るってどういうこと。夫が仕事の時間になったので、私は痛みと孤独に向き合うこととなった。

襲ってきたさらなる痛み。ああもうこれは死ぬレベルだ。人が死ぬときってこうかもしれない。体の奥底から湧き上がる悪寒にも似た痛み。私は自然にこの曲を心の中で流していた。本当の分娩のBGMはコレだ。好きな曲でも何でもないこの曲、だけど心の中のCDプレーヤーでちゃんと流せた。生命の始まりと終わりは似ているのかもしれない。それではお聴きください、「新世紀エヴァンゲリオン」のサントラより『Decisive Battle』。


エヴァ序 Decisive Battle