コンビニコーヒーの味

オフィス街、ビルとビルの間に穴が空いたようにぽつんと緑の広場があった。かろうじて遊具がある公園。とりあえず子どもを遊ばせることにする。

おやつとお茶は持っているけれど、食べるにはこの公園は狭すぎる。じゃあカフェに入るか?とも考えるが近々にカフェに行っており、教育上頻繁にカフェを利用するのは避けたいところだった(いつでもカフェで豪華なおやつだと思われては困るのだ)。子どもも遊びながら「そこのカフェに行けばいいじゃん」なんて言っている。オフィス街に似合わずなんだか陽気なラテンミュージックを店外に響かせているカフェがあったが、今日は我慢。

すると、少し離れたところにコンビニエンスストアを見つけた。窓際にイートインスペースがあるのが判る。これだ。私は子どもに「あと五分でおやつだよ!」と声をかけた。

私の生活圏のコンビニエンスストアもイートインスペースを広めに取る店が増えてきた。しかしオフィス街のイートインスペースは住宅街のそれとは比べ物にならない。カウンター席だけでなくソファ席まである。会社員のみなさんに昼食や夜食の休憩スペースとして重宝されているのだろう。その片隅に少しお邪魔することにした。

入るからには何か購入せねばならない。そこであのドリップコーヒーコーナーにあるカフェラテを選んだ。子どものジュース、それから百貨店で売っているあのお菓子のプライベートブランド版。本格派に準じたものがコンビニで手に入る不思議。

肝心の味は、どれも美味しかった。ショックなほどに。そういえば十年近く前「スタバのコーヒーよりマックのコーヒーがおいしい」という記事があったが、それに近い感覚だった。もちろんコーヒーショップのコーヒーと違うし、私が飲んだのはカフェラテだったからブラックのコーヒーはまた違う感想になるかもしれない。

いまここにカタカナでコーヒーと書いているけれど、珈琲豆専門店で買うものは漢字で珈琲と書きたい気持ちになるがコンビニエンスストアのものはカタカナでコーヒーの気分だ。香りの高さは専門店には敵わないだろう。でも、ちょっとした休憩には程よいクオリティ。缶コーヒーを買うよりもこちらを選ぶだろう。

夜、夫とこの話をした。夫も仕事中は缶コーヒーからコンビニコーヒーにシフトしたそうだ。「コンビニとしても利ざやがいいんだよね、あれ」…ああ、そういえばそんな記事を何年か前に読んだな。しかし専業主婦が利用することは無かったのですっかり忘れていた。

専業主婦も、オフィス街のコンビニでコーヒーを飲むように違う環境に身を置く時間が必要なのだろう。私は、カフェラテを飲みながら眺めた窓の外の景色を思い出す。私たちが立ち去ったあとは、知らない誰かがあの席で休憩するのだろう。居るかもしれない誰かの人生を少しだけ妄想した。

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