文化的生活の記録

「旅文学」の小さな本を作り始めました。

Curry and Coffee

珈琲沼にハマるよりも前に、単純に「美味しいね」と気に入っていた珈琲のお店がある。今回数ヶ月ぶりにそこへ豆を買いに行った。

店に入ろうと入口のドアに手をかけたとき、窓際にガッシリとした腕が見えた。あれ?おかしいな、ここは割と華奢な男性がやっていたお店なのに。店内に入ると、やはり知らない顔の男性。店の雰囲気はそのままだ。「豆を買いに来たのですが」と言うと、ソファ席に案内された。

豆のメニュー表からコスタリカを選ぶ。店のブレンドではなく、コスタリカで「珈琲沼にハマった店」と味を比べてみたいと思ったのだ。知らない顔の男性は、私と子どもに水を出してくれた。焙煎までは15分。店で待たせてもらうことにする。ソファに深く腰をかけると、ふんわり包まれているようで居心地が良い。そして店に漂う濃厚な香りを楽しむ。珈琲ではなく、カレーの香り。

そう、この店は珈琲豆専門店ではなく、カレーの店なのだ。ジャパニーズカレーのルウのような香りではなく、ナンで食べるカレーのようなスパイシーな香り。しかし同時に珈琲を販売しているくらいだから、珈琲を打ち消さないレベルの上品な濃厚さ。店の内装も程々にレトロでデートにも使われていそうだ。

突如外から来客が、と思ったらいつもの店主が入ってきた。なるほど、この知らない顔の男性は彼の元で働くスタッフなのか。それだけ年月が経ったのだな、と思う。そのうち焙煎が仕上がり、豆のまま密閉袋に入れてもらう。知らない顔の男性がおまけのオリジナルブレンド・ペーパードリップをぎこちない手つきでショッパーに添えてくれた。

珈琲もカレーも、私はどちらも大好きだ。カレーは独身時代に友達や好きな人と食べ歩いていた。ステインの気になるものばかり…と思いつつも、それぞれの味、さらに組み合わせた味に魅力を感じるのは私だけではないだろう。今度はカレーも食べに来よう、と思いながら店を出て、時間きっかりに迎えにきた夫の車に乗り込んだ。