「お母さんありがとうソング」の背景

先日NHKの歌謡番組を見ていたら、演歌で「苦労をして育ててくれたお母さんありがとう」という内容のものが流れていた。川中美幸が歌っていた。私が幼い頃から川中美幸の姿は変わらないような気がする。ヒットソングはよく知らないけれど、同居していた祖母がジャイアンリサイタル的に歌っていたのは彼女の曲だった。

いまは昔ほど「母ちゃんが夜なべをして」だのヨイトマケだの内職だのといった雰囲気は感じない。そりゃ夜間や長時間の労働など辛い仕事はたくさんあるけれど、昔ほどではない。苦労はあるけどハイテクな影がチラつくのだ。繕い物をしているそばにもスマホがあるだろう。演歌で歌われる世界と乖離していく。

そこで思い出したのがファーストフード店のことだ。最近ファーストフード店ではシニア層を積極採用していると聞くし、実際接客を受けたことがある。コンビニでもその流れを感じる。「うちのばあちゃん働き者。ばあちゃんの作ってくれたバーガー塾帰りに食べる」みたいな光景がどこかにあるのかもしれない。

そこでさらに思い出したのは日本のヒップホップやレゲエミュージシャンが出しがちな「お母さんありがとうソング」だった。そうか、これは演歌の流れを引き継ぐものだったのか。

ファーストフード店のシニアの方は、ソフトクリームを頼もうとした私たちに「すみません、今日ソフトクリーム切れちゃったんです、ごめんなさいね」と丁寧に謝ってくれた。その謝り方には、若者には出せない温かみがあった。私が「いえいえ、いいんですよ」と言うと、シニア店員さんは我が子に風船をくださった。