文化的生活の記録

「旅文学」の小さな本を作り始めました。

書類作成への異常な情熱

「年末調整の書類」を早めに出すのがここ数年の私のブームである。なぜなら、放っておくと締め切り前夜に大慌てで記載することになるから。どうせなら早く書こうと慌てるほうがやる気が出るから。今年はその勢いが加速し、ついに「夫が関係書類を会社から持ち帰った当日夜」に記載し、翌日には持たせた。来年はこれ以上早く作成することは出来ないのでむしろ残念な気持ちを抱えながら。

夫が会社の総務に提出すると案の定驚かれた様子。だよね、昨日の今日だものね。扶養家族であるところの私はパートにも出ておらず収入がほぼゼロなので、我が家の年末調整で最も手のかかる部分は生命保険などの項目。某共済と学資保険に入っているが、某共済は家族各々の契約があり、学資保険に関しては私の個人的な預金から小刻みに複数回契約をしているため、書く件数も多い。どうせ返ってくるお金の上限は決まっているのだから一定以上は申請しなくてもいいのだろうけど、何か間違いがあってはいけないと思い全件記載している。

よって毎年、この書類を書くときは「米粒写経」をしているような気持ちになっている。本来一行である部分に二行分書くからだ。別紙添付も可能なようだが、紛失を恐れるあまりの行動である。家で一番書き味の良い細いボールペンを使って丁寧に慎重に。周囲に飲み物など汚れる可能性のあるものを置かないで。ある年、この書類を提出すると総務の担当者から「◯◯くんの奥さんの字は毎年すごいわね」とリアクションがあったようで、それを伝え聞いた私は内心ほくそ笑んだ。私は総務の人に褒められたくてこの書類に挑んでいるのかもしれない。子どもだな。

人間には得意分野があり、好き嫌い関係なくそれが仕事になるとラッキーだな、とよく思う。私は苦手な科目でもノートテイキングだけは誰にも負けなかったから(そして「早くノート取るのもいいけど理解しようね」と溜息をつかれるのだ)、それが仕事になるといいのにと思っていた。でもノート取りの仕事なんてないものね。国会の速記者とか?そう思いながら会社勤めをしたが、意外と会社員の仕事はそんな人間の性に合っていた。上司がパーテーションの向こうで取引先と交渉しているのを聞き、その内容に即したデータをすぐに作成して持っていくと重宝がられた。誰か「書類作り検定」でもやってくれたら、実用的でいいんじゃないか。既に秘書検定などに含まれていたら申し訳ない。

そのように我が書類作りの情熱と実績に酔いしれていると、夫が「書類作りくらい早く掃除もできるといいね……」と小さな声でつぶやいた。興味のあることはサッサとやるけれど、自分にとって優先順位が低いものは後回しする傾向を何とかするのが我が人生の永遠の課題である。間もなく十二月、年末はすぐそこまで来ている。