文化的生活の記録

「旅文学」の小さな本を作っています。

帰省の泥

遠くの山に見えるうっすらとした雪。もうすぐ幼少期を過ごした田舎に着く。

例年正月は雪深くなるあの地域。それを理由に帰らない年も多々あった。ここ三年は連続して雪が少ない。というわけでノーマルタイヤしか履いていない我が家の車で田舎に向かっているのだ。

元日は夫の実家で過ごした。「何日かご実家に泊まっていいんだよ」と言われたけれど、「帰ると忙しく疲れますので」と笑いながら本音を漏らした。夫の実家の方が居心地の良い、変な嫁で居させてもらう。

田舎の家には母や祖母、そして親族たちがいる。母や祖母を除けば、みんな優しく楽しい人たちだ。けれど、あまり私の人生に深入りしてこないから居心地が良いのだとわかっている。私に要求など何もない人たち。いざというときは、やはり彼らに対して遠慮があるのだ。ここは私の家ではないという気持ちが。

親族が「さっき畑からとってきたから泥ついてるけど」と帰りに持たせてくれた大根などの冬野菜。受け取りながら私はドラマ「北の国から」を思い出す。上京する純くんが、トラック運転手さんから「受け取れない」と渡されたお札。五郎さん(田中邦衛演じる純くんの父)がトラック運転手さんに渡した一万円札。五郎さんの指の泥が付いているお札。

帰宅して野菜を台所のシンクに置いた。私が染まれなかった町の泥をしばし眺める。