文化的生活の記録

「旅文学」の小さな本を作り始めました。

無視は最大の……

無視は最大のナントカというけれど、正しい表現と出典はよく分からない。最大の攻撃だとか侮辱だとか。いずれにしても腑に落ちることが多々ある。

会社員時代、週に一度は会うほどの仲の良い友達にいきなり無視されたのは、共通友人の結婚式会場でのことだった。その数日前、私は彼女に「私も結婚することになったのだが、日取り的にどうしても○月○日になってしまう」と謝りの電話をしていた。その○月○日頃、彼女はちょうど出産を予定していたから、恐らく出席してもらうことは難しい。

つわりで苦しかったのもあるかもしれないが、元々気分屋の彼女の怒りは相当だったようだ。共通友人の結婚式当日、会場のトイレで会って、話しかけても一切反応しない。聞こえていないはずはない、周りには誰一人居なかったから。

式はつつがなく進行した。他の友人とは機嫌よく話をしていた彼女をなるべく視界に入れないように過ごす。しあわせな式の最中に申し訳なかったけど、感情は殺されていたので記憶もあまり無い。楽しんでいるふりを頑張っただけ。

二次会にはその無視し始めた友人の夫も来ていた。私も知っている人だ。ついでに言うと私の婚約者(つまり現在夫である人)の知人でもあった。この人は普通に私に話しかけてきた。よって私も普通に話す。遠くに無視し始めた友人の横顔が確認できた。彼女の右半身は私を察知しているに違いない。彼女は何を思っているのだろうか。

彼女の夫は最後に「そういうわけだから、俺もお前らの結婚式行かないから」と言った。そのとき、私の結婚式の話は話題にしていなかった。もちろん事前に彼女が事の流れを彼女の夫に伝えているのは想定の範囲内だが、話題が随分切り替わったものだ。私は「出産の時期ですもんね、難しいですよね」と答えた。彼女の夫は「じゃ」と言って立ち去った。

毎日のように連絡を取っていた友達、まるで恋人同士みたいだねと周りに笑われていたほどなのに、プツリと途絶えてしまった。私が最初から日取りを彼女優先にすべきだったのか?しかし私には私の人生が、我が家の事情があった。友人にそこまで気は遣えない。

それとも伝える時期や伝え方が悪かったのだろうか。しかしどんなに先延ばしにしても、無視されるのは同じだろう。私は出来るだけのことをしたはずだ、と自らに言い聞かせた。

それから数ヶ月が過ぎた。彼女のつわりも落ち着いた頃かもしれない。「(一緒に通っていた)エステから何か連絡きた?」と彼女からメールが来た。通っていたエステは定期的に勧誘の連絡が来るタイプの店だ。回数券を購入していたので、期限内に行かないと損である。よって、彼女から連絡が来る前に何回か私一人で通っていた。

その旨伝えると「一人で行くなんてひどいね」と返事が来た。ひどいのはどっちだよ。私は「無視までされたのに『一緒に行こう』と誘うほど、空気読めないわけではないよ」という内容を返事した。

次に連絡が来たのは私が新婚旅行に旅立つ日だった。他の友人から私の結婚式に出た話を聞いた、あのときは無視してごめんなさい、といった内容のメールだった。その謝罪を私は受け止め返事を書いたけど、以前と同じように彼女と交流するのは無理だった。それは私の心の中の問題でもあり、彼女の心の中の問題でもある。さらに、私も結婚することで以前と同じように密にやりとりしたり会うのは難しい。ある意味、よいタイミングだったのかもしれない。

彼女とは以後会わざるを得ない機会が何度かあった。さらなる別の友人の結婚式や同窓会的なパーティーで。会えば楽しく話すけれど、少し私は演技している。共通の友人たちがハラハラしているのがわかる。ごめん、みんな。共通の友人たちには、私からは要点のみしか伝えていない。彼女が私のことをどう言っているのかは分からない。みんなの中で私はひどい人間かもしれない。もしそうだったら……そう思われて当然なのかもしれない。でも、私にはもうどうすることも出来ないし、しない。

私がこの話を今日書いたのは、私が今度は無視をする立場になったからである。対象は実母。原因は少し前にこのブログにも書いた。

実母のLINEを既読スルーしている状態だから、完全な無視とはいえないかもしれない。しかし普通の人間関係なら失礼極まりない。

だが、もう私には限界だ。これまで、つらくて何度も反論したり注意してきたことさえも、実母にとっては「構ってもらえている」「反抗期の延長」という感覚のようだ。違うんだ、もうあなたは迷惑なんだ、そう言いたいけど、今まで何度も言ったけど、言えば言うほどしがみつく別れ際の面倒な女のようになるのだ。実際面倒な女なのだが。

そんな人には無視をするしかない。本当は未読にしたいけど「娘に何かあったのかも」などと一人で盛り上がって私の姑や夫に相談されたら面倒である。また、祖母が死んだなどの連絡が入るようなケースが考えられるので完全にブロックできない。

それもまだまだ甘やかしていることになるだろうか。私もなんだかんだで世の中に体裁よく見せたいのか。親を裏切るひどい娘になりきれない。毒親という言葉はとっくに知ってるよ、親に対してじゃなく世間に対して体裁よく見せたいんだよ。

そのために私は、既読スルーで親を利用する。無視しながら、無視された時のことを思い出す。「おばあさん、施設への完全入所が決まりました」という実母のLINEを読んでいると、我が子が「なにかあったの」と心配そうに言った。「なんでもないよ、またあの『ばぁば』がやらかしてるだけだよ」と言うと「またかぁ」と子どもは笑う。

「もしママが間違っていることをしていたら、そのときはちゃんと間違ってると言っていいんだよ。そういう力をつけるんだよ。ママはなるべく正しいことを君に教えるけど、それでも人間間違えることがあるかもしれないから」

もし私が酷い親だと思ったら、突き放してくれて構わない、出来るだけそうならないように生きる。我が子に伝わっただろうか。いや、伝わってもそれをどう判断するかは我が子の自由だ。

無視は最大の防御でもある。