文化的生活の記録

「旅文学」の小さな本を作っています。

大人としての役目かなわず

週末のこと。夕方、子どもと近隣学区のちいさな公園に行った。子どもがブランコにかけていくと同時に、背後から「すいません」という声がした。

ショートカットのすっきりとした雰囲気の小学生女子三人組。木の上を指差して「これ取れませんか?」と言う。「遊んでいたらボールが木に引っかかって取れなくなった」という、漫画にありがちなシチュエーション。生まれて初めて遭遇した。

ブランコに居る子どもに荷物を預ける。「これなら見つけたんです、あと少しなんです」と一人から手渡されたのは熊手。「私もそんなに背が高くないからねえ…」と言いながら頑張って熊手を手に背伸びをする。熊手は全く木の枝に当たらない。ジャンプしてもダメ。

困ったなぁ、これは大人としてバッチリ助けてあげたいところなのに。公園は小さすぎて大人どころか他の人も来る気配は無い。

まるでひねられた入試問題を解くときの気持ちだ。「木の上にボールがあります。手元にあるのは熊手のみです。他に、公園内にあるものは自由に使って良しとします」と問題文のナレーションが脳内再生される。

ふと、ベンチの上にある木の実と石が目に入った。他の子どもが遊んでそのままにしたのだろう。私は子どもたちに「本当は危ないからしない方がいいけど、うまくコントロールしてやってみるから。みんな離れてて」と言い石を掴んだ。

気持ちはオープン戦で登板した二軍でおなじみのピッチャー。ここでいいところを見せて一軍にあがりたい。久しぶりの実戦で自信はないがやるしかない。投げた石はボールに命中!やった!石も誰もいないところへ落下。オッケー!しかしボールはビクともしない。オーディエンスの残念そうな声が響く。

結局彼女たちは一旦帰って作戦を立てるとのこと。「何か他のボールがあれば違うかもしれないけど…役に立たずごめんね」と伝えると「いえ、いいアイデアをいただきましたので!ありがとうございました!」と丁寧に爽やかに立ち去っていった。

しばらく考えたが、自宅にもボール取りに最適なものはないし、ただボーッとボールを眺めるだけだった。子どもはそんな私を眺めながらブランコを漕ぎ「がんばったね」と言った。

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