文化的生活の記録

「旅文学」の小さな本を作っています。

天から降りてくる音

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子どものピアノコンクール準備と、自身の体調不良でドタバタする日々である。コンクール前の追い込みの時期…つまりまだ曲が仕上がっていないこともあり、音楽教室に出入りする回数も多い。

そこで先日のレッスン後、たまたま居合わせた他のレッスン生を先生が呼び止めた。「〇〇ちゃん!ほら、憧れの人だよ!」と仰る。なんと我が子に憧れている子が存在していることが判明したのだ。どうやら以前小さい子の発表会にゲスト出演したときに演奏を見てくれたらしい。

「あんな風に弾きたい!って言ってたのよね」と先生がその子に話を振ると、その子は我が子に「何か弾いてください」といきなりリクエストしてきた。「えー!」と驚きながらも我が子は嬉しそうだ。ロビーのピアノで一曲弾きはじめる。

憧れの人だなんて言われると、子どもは自分の力を過信してしまうかもしれない。本来の負けず嫌いもあり、コンクールには勝つことしか頭にないようである。コンクールは自分より上手い人がたくさん出て当たり前の世界。井の中の蛙にならぬよう、鼻をへし折られるのも必要なことであろう。

そんな中でも勝ち抜くためには、結局のところ自分のベストを尽くさなければならない。自分の中で最高の演奏をするためにはやはり練習しかないのだ。ピアニストもアスリートと同じ部分がたくさんある。私はついつい松岡修造のような迷惑な熱さで、我が子に語ってしまう。自身には音楽の経験や知識もないのに音楽を語る私の姿を見て、夫は「野村沙知代みたいだね、野球できないのに指導するみたいな…」と称す。

でもそれでよいのだ、野村沙知代な私は先生の言葉を自主練の際に我が子に伝えるマシーンである。演奏で大切なのは最初の一音め。「天から最初の音が降りてくる、それを響かせるように!」詩的な言葉が我が子を動かす。どうか本人自身が納得できる最高の演奏が出来ますように。